たべちゃいたいほど、恋してる。
未だ在校生の間で伝説のように語られるあの出来事。
その真相は、防戦一方だった龍之介に痺れをきらした上級生が鉄パイプやらバットやらナイフやらを持ち出したというもので。
仕方なしに龍之介が素手で応戦したのだが(しかも絡まれた理由は銀色の髪と顔、身長という理不尽さ)、その事実を知っているのは校内でも龍之介自身と健くらいだ。
教師さえも知らないだろう。
龍之介も特にそれを周りに言うつもりはない。
「んと…今は黒に戻したの?」
「いや」
弁当の中身を平らげ"ごちそうさまでした"と両手を合わせた優衣は再び可愛らしく首を傾げた。
(なんなんだ、その動きは。狙ってるのか?)
ストライクゾーンど真ん中の仕草に心の中で突っ込む龍之介。
それを隠すように口から出たのは短い否の言葉。