たべちゃいたいほど、恋してる。
ただ気になったことを聞いただけだった。
特に変な質問ではなかったと思う。
少なくとも優衣にとっては。
だが、そんな優衣を夏希は"は?何言ってんのこの子"と言わんばかりの目で見ているし、健も困ったように笑っていた。
(へ?何、私変なこと聞いた!?)
「うーちゃん…大上の噂聞いたことある?」
「噂?」
知らない、と首を横に振る優衣に夏希は盛大な溜息を吐く。
「あはは!だよな。うーは噂とか興味ないし知らないよな」
仕方ないって!と健は夏希の肩を叩いた。
だが夏希は、有り得ない…と肩を落とし頭を抱えている。
大上龍之介を知らない人間などこの学校にはいないと思っていたのだが、まさかこんな近くにいたとは。
まさに夏希の心境はそれである。
「あんた…よくそれで今まで生きてこられたわね、この学校で…」
夏希はもう一度深く息を吐くと、ガッと優衣の両肩を掴んだ。
その顔は龍之介のそれとも引けをとらぬ般若のような形相。
びくり、と優衣の体が震える。