たべちゃいたいほど、恋してる。




その瞬間、一瞬だけ健の動きが止まる。

優衣の瞳は不安そうに揺れていた。


何をそんなに不安がっているのか。それは健にはわからない。


だが




「うーん…俺はよくわかんないけど。でも、うーが違うと思ったら違うんじゃない?」




と先程と変わらぬ優しい笑みで答える。


その笑顔に安心して笑みをこぼした優衣は小さく、うんと返事をして教室を出ていく健を見送った。



周りを見渡せばもう誰も教室には残っていなくて。

優衣は一人になった教室でふぅと溜息を吐くと自分の席に腰をおろした。


そしておもむろに鞄の中を漁る。




「あ、あった」




お目当てのものが見つかったのか、嬉しそうに笑う優衣。

鞄から出てきたのは龍之介から貰った抹茶のデザートだった。




「へへ…美味しそう」




(スプーンまでくれた大上くんに感謝して…いただきます!)




手を合わせて行儀よく挨拶してからデザートを一口、口に運ぶ。




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