たべちゃいたいほど、恋してる。
言うまでもなく、当たり前のように龍之介が車道側を優衣の速度にあわせて歩いている。
それを感じさせないほどナチュラルに。
見た目とは裏腹にどこまでも紳士な男・大上龍之介。
そんな龍之介の何気ない動作に、優衣の心臓は高鳴るばかりだ。
「…ここ、俺ん家」
最寄りの駅から二十分ほど歩いた頃だろうか。
閑静な住宅地の一角でぴたりと龍之介の足が止まった。
龍之介の言葉に優衣が顔を上げれば、そこに立っていたのは一歩間違えれば城にも見えるであろう西洋風の綺麗な一軒家。
(…おっきい…)
周りの家とは明らかに違う造りの家(つまり浮いている)についつい魅入ってしまう優衣。
そんな優衣に龍之介は恥ずかしそうに頭を掻きながら"親の趣味だ"と零した。