たべちゃいたいほど、恋してる。




今渦巻く感情をすべて捨て去ろうとするようなその行動は、いつも見る泣き虫な優衣とはまるで別人の表情で。




(…あぁ。だから、か…)




そんな痛々しい姿に龍之介は漸く理解する。


遊園地で優衣が流していた涙の理由と、虚ろな瞳で呟いた言葉の意味を。




「…優衣…」




きっと、世界に見放されたような気分だったのだろう。

家族の仲が悪くない龍之介にはわからないほどに傷ついたのだろう。


優衣の怪我から父親がどういう人間なのかは龍之介も何となく察していた。


そして、優衣がそれでも父親を大好きだということも。



しかし、今まで一度もそのことを深く尋ねたことはなかった龍之介。




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