たべちゃいたいほど、恋してる。
だがそんな思いとは裏腹に、次第に強くなる腕の力を緩めてやることは出来そうにない。
それは優しさと同時にじわじわと沸き上がってくる別の感情のせいで。
(こんな時に…俺、最低だ)
心底傷ついている優衣。
そんな彼女を見て、普通の男なら自身が守らなくてはという正義感が込み上げるのだろう。
勿論、龍之介もそう思っている。
この小さな兎が一人で闇に取り残されないように、傍にいてやらなく守ってやらなくてはと。
そう思っている。
(…でも…)
それだけではない、渦巻く感情に吐き気がした。
(…俺だけの為に泣けばいい、なんて。俺だけの為に我慢して、俺だけの為に笑えばいい、なんて)