たべちゃいたいほど、恋してる。




バンッ




「うひゃあっっ!!??」




思った以上に大きな音を立てて開いたドアと一緒に聞こえてきたのは先程の声。




(意外と近くにいたんだな)




声の主を辿るように顔を向ければ、そこにいたのは何度か見かけたことのある女子生徒。




(クラスメート、だよな?確か…遊佐、だったと思う)




「お、大上くん!!」




龍之介が居るなど思わなかったのだろう。


元々大きいであろう目を更に大きく開いて龍之介を見ていた優衣だが、次の瞬間には目を綺麗なアーモンド型に細め




「大上くんおはよう!あのね今日は今の時間音楽室なんだよ〜大上くんも迷っちゃったの?」




と満面の笑みを浮かべた。




(…あれ。今一瞬、花が咲いたような気が…)



幻覚か、と思いながら目を数回瞬かせる龍之介。




(ってか思い出した。遊佐優衣、か。迷子で有名な奴だ。よく誰かしらがこいつを探してんの見たことある)



あまり学校に来ることのない、来ても他人に興味のない龍之介は優衣の姿を見るのは初めてで。

こんなに小さい奴なのか、とまじまじとその姿を凝視する。




(って…ん?こいつ今"大上くんも迷っちゃったの"とか言わなかったか…?)




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