たべちゃいたいほど、恋してる。
母も平日のこの時間に連絡無しで来ることは殆どない。
その事実に思わず顔を俯かせる優衣。
龍之介の温かで優しい家庭を見たせいだろうか。
いつも通りであるはずの家の様子が、無償に寂しいものに思えた。
(…考えちゃ、だめっ!考えたって変わらない、そうでしょ?)
中へ中へと入っていきそうな思考に、ぎゅっと眉を寄せ強く歯を食い縛る。
すると
「じゃあ、俺が上がり込んでも何の問題もねぇわけだ」
ふわっと優衣の頭に落ちてきた龍之介の手。
いつのまにか家の手前まで辿り着いていたらしい。
歩みを止めていた龍之介は優衣の目の前に立ちくしゃくしゃとその髪を撫でる。