たべちゃいたいほど、恋してる。
優しく笑って諭すようにそう言われてしまえば、優衣はもう頷く他ない。
いつだってそうだ。
小さな頃から帰り道がわからないと優衣が泣けば、いつも行く道を示し手を引いて歩いてくれる健。
健と一緒に遊ぶときだけは、一度だって迷子になったことはなかった。
その健が大丈夫だと言っている。
なら、それを信じる以外なにもないのだ。
優衣の中に健を疑うなどという選択肢は初めから存在すらしていない。
「それから!仕方ないから一つだけ…うーに良いこと教えてあげるな」
素直に頷いた優衣を確認すれば、健も満足気な笑顔でうんうんと頷く。
その笑顔は間違いなくこの学校でよく見られる爽やかな彼のもの。