たべちゃいたいほど、恋してる。




とにかく、これ以上何かを見られる前にこの女をどうにかしなくては。


今、龍之介の頭の中を占めているのはそれだけだ。


龍之介は、どうにか自分の弁当から優衣の興味を逸らすため、首根っこを掴みその体を持ち上げる。


思ったよりもずっと軽いその体は簡単に持ち上げられた。


慌て始める優衣を調理台から離れたところに降ろすと眉を潜めて優衣を睨む。



優衣が顔を真っ青にするのが見えたが見なかったことにするらしい。




「……てめぇ…いい度胸だな」




龍之介の声に優衣は小さい体を更に小さくする。




「…今見たものは全部忘れろ。一つ残らず全部、だ」


「全部って…おにぎりとか厚焼き卵、たこさんウインナー、鰤の照り焼き、唐揚げ、ポテトサラダ、ほうれん草のおひたしに…」


「だぁぁぁああ!!!!忘れろって言ってんだろ!!!!」




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