たべちゃいたいほど、恋してる。




しかし、その顔はすぐに卑しく歪んだ笑みへと変わった。




「それは優衣ちゃんがいるから?」


「わかってんなら止めろ」




井上の口から出た優衣の名前に更に険しくなった龍之介の顔つき。

知らずのうちに口元が引きつりそうになる。


それと同時に龍之介の頭を過った嫌な予感。

外れることは恐らくないであろうそれ。野性の感、とでも言うべきか。


普段から喧嘩を吹っかけられることの多い龍之介は、このての感が他人より優れている。


そして何よりこれを感じた時には良いことが起こった例しは一度もない。

裏を返せば、必ず何かしら問題が起きるということ。


勘弁してくれよ、と思いながら目を瞑り自身を落ち着かせるように一度深く息を吸う龍之介。




< 351 / 574 >

この作品をシェア

pagetop