たべちゃいたいほど、恋してる。
「…おい、お前…」
ゆっくり目を開け何かしたのか、と龍之介が問おうとした時には既に彼女の姿は無くなっていて。
彼女がつけていた、優衣のものとはまったく違うきつい香水の残り香だけが廊下に広がっていた。
(…はぁ…いつからあんな女になったんたか)
無意識に口をついて出る溜息。
龍之介の記憶にある彼女は少なくともあれほど卑しい笑みを浮かべる女ではなかったはずだ。
無邪気に笑う、言うならば優衣のようなふんわりとした雰囲気だったはずの彼女。
そんなことを考えている途中、龍之介はふと以前屋上で健に言われた言葉を思い出した。
"龍のタイプだと思った"
それは優衣を見つけた龍之介に向けられた言葉。