たべちゃいたいほど、恋してる。




それもこんな、誰もいなくなったであろう時間に。


実際、今の今まで龍之介が彼女を同じ階で見かけたことは一度もなかった。




「それ…誰に言われたんだ…?」




恐らく龍之介の予想が外れていることはないだろう。


それでも確認するよう優衣に聞いてしまったのは、龍之介が思っている以上に自身が動揺しているからだろうか。




「…本人…」




ドクドクと嫌な音をたてる心臓。


小さく返ってきた答えに思わず溜息が零れた。

やはり龍之介の予想は正しかったらしい。




(あの女…)




有り得ねぇ…と心の中で愚痴りながらも、龍之介はどうやって優衣に説明するべきかと必死に頭を悩ませる。




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