たべちゃいたいほど、恋してる。
(あっ!)
その視線の先には、背中を丸め(それでも大きく見える)眉間にしわを寄せながら頭を掻いている龍之介。
周りに漂う不機嫌オーラは放課後の約三倍程である。
朝のHR前から龍之介が登校してくるのは極めて珍しい。
それ故に周囲から視線が集まっているのだが、当の本人はそんなものまったく気になっていないようだ。
そんな誰が見ても低血圧なのだろうと予想出来るほど不機嫌な龍之介に近づきたい者が一人。
優衣である。
傍に行きたいのかうずうずと揺れる優衣の体。
そんな優衣に思わず夏希の口から溜息が漏れた。
「行ってきなさい」
そう背中を押された優衣は一瞬躊躇うように夏希を見上げる。