たべちゃいたいほど、恋してる。
「何がずるいんだよ」
ぎゅうっと龍之介の服を握る手に力を込めれば、頭上から聞こえてきた龍之介の笑いを含んだ声。
片眉を下げて笑っている姿が優衣には簡単に想像出来て。
更に赤くなったであろう顔を龍之介の体に押しつけた。
胸いっぱいに入り込む龍之介の香り。
香水とは違うそれに煙草の匂いを感じなくなったと気付いたのはつい最近のこと。
「……秘密だもん」
そう呟いた優衣に龍之介の笑った声が聞こえた。
(悔しいから、格好良過ぎるなんて言ってあげない)
結局二人が揃って教室に戻ったのは、二限目の授業が終わった頃で。
いつもとは少し違う甘酸っぱい想いを噛み締めながら一日を過ごした。