たべちゃいたいほど、恋してる。
「あ、あの!ありがとう、大上くん!」
床に降ろされた優衣は慌てたようにお礼を言う。
「気にすんな」
龍之介は小さな優衣の頭を撫でるとあいている手パーカーのポケットを探る。
中から出てきたのは先程忍ばせた龍之介お手製のデザート。
龍之介はそれをそっと優衣の手に持たせた。
「こ、これ…!」
両手で落とさぬよう受け取った優衣は、驚いたように菓子と龍之介を見比べる。
その動きがあまりに小動物のようで、龍之介は思わず頬を緩めた。
「これやるから、さっきの忘れろ、な?」
わしゃわしゃと撫でればはらりと落ちる優衣の柔らかそうな栗色の髪。
それを丁寧に梳かしてやる龍之介。
「んじゃ帰りは迷子になるなよ」
最後にもう一度軽く頭を叩くと龍之介は踵を返し来た道を戻っていく。