たべちゃいたいほど、恋してる。




そして最後に浮かび上がったのは見たことなどないはずの二人が並んだ姿。




(嫌だ嫌だ。見たくない)




頭の中に現われたあまりにも絵になる二人の姿にズキンズキンと痛む胸の奥。


苦しさに堪えるよう、優衣は服の胸元をきつく握った。




「こんなの、知らないっ」




泣きそうに顔を歪めてそう呟く。


これほどまでに胸が痛くなる経験を優衣はしたことがない。

父親から罵られ殴られるときに感じる痛みとはまったく違うそれ。


それよりも、ずっと苦しい。

深く優衣の笑みを奪うような痛みは優衣を闇へ引きずり込もうとする。


井上のことを考えるたびに濃くなっていく闇。


そんな自分に父親の姿が重なって見えた。




(怖い怖い。自分が、恐い)




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