たべちゃいたいほど、恋してる。




龍之介にはこの後の授業に出るという選択肢はない。




(とにかく、飯を食わなくては。何の為の弁当だかわかんなくなっちまう)




「…大上くん!」




そんなことを考えながら歩いていると、後ろから優衣が龍之介を呼ぶ声がした。




「あの、本当にありがとう!!これ大切に食べるからね!」




叫ぶように言う優衣。


顔だけ振り返ってみれば必死にデザートを指差しながら身振り手振りで気持ちを表している。




「…ったく、声でけぇよ」




悪態を吐きながらも、龍之介の表情はとても穏やかで。



"ばーか"



龍之介は優衣にもわかるように口を動かすと、また歩き始めた。


すぐに後ろを向いてしまった龍之介には、その後ろ姿を優衣が最後まで見送っていたことなど知る由もない。


龍之介の頬が僅かに赤く染まっていたこともまた然り。




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