たべちゃいたいほど、恋してる。




「…いらなく、なっちゃった」




眉を寄せながら小さく苦笑して包みを開ける。

包みの中から出てきたのは、優衣が食べるには些か大きすぎる弁当箱。

明らかに男性用のそれで。


箱の中には優衣なりに精一杯頑張ったのであろうことが一目でわかる色とりどりのおかずが敷き詰められていた。


一緒に包んであった自分の使っているものより少し長い箸を取り出し出汁巻玉子を一つ口に運ぶ。


しかし




「…美味しくない」




一瞬にして歪んだ優衣の顔。


朝味見をしたときは、それなりに上手く作れたような気がしていた。

実際、優衣の作った弁当の中身は決して不味いものではない。


だが優衣が思い出すのはこれではなく、龍之介が作ってくれる味で。




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