たべちゃいたいほど、恋してる。




その日、結局授業に出ることのなかった龍之介は、放課後を一人屋上で過ごしていた。



ギィ…



龍之介しか居なかった場所に扉の開く音が響く。


誰が来たのか、と飲んでいたコーヒーのパックを持ち直し腰を上げようとした龍之介だが、それは直ぐ様止められた。




「あ、龍。やっぱ此処にいた」


「…んだ、タケかよ」




屋上の扉を開けたのは水泳部のエースの梨本健。

実は数少ない龍之介の理解者でもある。




「今日は俺の幼なじみ届けてくれてサンキューな」




ニッと爽やかな笑顔の健に龍之介は顔を顰めた。




(幼なじみ…?誰の話だ、それ)




わけが分からないとばかりの龍之介の表情に健は"あれ?"と首を傾げる。




「うーが、龍に音楽室まで送ってもらったって」




(うーって…あぁ、いつも話に出てくる幼なじみの女か。そいつが…音楽室…?)




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