たべちゃいたいほど、恋してる。
「…散歩してくる」
これ以上此処で考えても覚悟は決まらない。
寧ろ立ち直れなくなりそうだった。
それくらい混乱している龍之介の心。
龍之介は隣に座っていた百合に短く一言そう告げると、静かに部屋を後にする。
やりきれない感が漂っている龍之介の後ろ姿を見て百合が零した溜息は、龍之介に届くことはなかった。
部屋を出てからどれくらい経ったのか。
それすらわからないまま、目線を下げ自分の足元を眺めながらひたすら歩き続ける龍之介。
その瞳が何を映しているのかもわからない。
いつも堂々と風をきっているはずの黒い髪はカチューシャで留められ、垂れ柳のように龍之介の顔を隠している。
その時、たまたま通りかかった交差点で赤信号にぶつかった。