たべちゃいたいほど、恋してる。
「こんなんで優衣のこと守れっかよ」
こんな、一人の男の言葉に左右されるような情けない自分に何が出来るのか。
龍之介はこれほどに自分の無力さを感じたことはなかった。
黒く染めていたはずの髪の根元に見える銀色が太陽の光を反射して眩しい。
この銀色くらい自信を持って光ることが出来たなら。
この存在のようになれたなら、もう一度この腕で優衣を抱き締めることが出来るのだろうか。
そんな思いが過ったのと同時に龍之介の視界に入った一軒の店。
まるで今こそ決意するときだとでもいうように、その店は龍之介を誘う。
吸い込まれるようにしてそこへと向かっていく龍之介の足。
そして躊躇うことなくその扉を開いた。