たべちゃいたいほど、恋してる。




そんな電話口で唸り始めた龍之介に、はぁ…と大きな溜息を吐く健。

そして




「龍さ…いい加減うーとちゃんと話しなよ」




と怒ったような声で投げ掛けた。


機械越しに伝わる健の言葉に胸の奥が悲鳴を上げる。




(わかってんだよ、そんなこと)




それを声に出来ないのは龍之介の弱さかプライドか。




「うー…毎日一人で屋上行ってるよ。あの方向音痴のうーが」




言いたいことわかるだろ?と言う健に遂に押し黙る龍之介。

痛んだ胸はどんどんと息苦しさを伴っていく。

きゅうきゅうと痛む柔らかな場所。

それは増していく一方で。


もう"好き"という言葉以外当てはまらない痛み。


痛いほどわかるのだ。

健の言いたいことが。




< 489 / 574 >

この作品をシェア

pagetop