たべちゃいたいほど、恋してる。
《兎さんの憂鬱》
あれから五日。
優衣は一度も龍之介に会うことが出来ずにいた。
あの日のお礼を再度きちんと伝えるべく毎日お手製のクッキーを焼いて持ってきているのだが、会うことが叶わないため結局毎日自分で食べる羽目になっている。
「あ〜あ…今日も渡せなかった」
学校からの帰り道。
優衣は一人溜息を吐きながら、とぼとぼと俯きがちに歩いていた。
この辺りは幼い頃から住みなれた地元。
優衣が唯一、一人で出歩いても迷子にならない場所である。
だからこそ近場の高校を選んだのだが。
なにはともあれ、連日(中二日は休日だった)空振るとさすがの優衣も落ち込むというものだ。
溜息だってつきたくなる。
(毎日クッキー食べてたら…太っちゃうよ、私)