たべちゃいたいほど、恋してる。




校内で未だ迷子になる彼女が懸命に屋上に辿り着く理由。


そんなものはたった一つで。


きっと二人の関係を知る生徒全員が気付いている。


優衣が龍之介に会いたい一心で、必死にその後ろ姿を追い掛けているということ。


ただひたすらまっすぐな恋心。




(馬鹿じゃねぇの、俺)




そんな優衣の姿がいとも簡単に想像できて。


なんてことをしてしまったのかと、らしくもなく目頭が熱くなった。


詰まる息をなんとか吐きだせば、溢れる感情の色は計り知れない。


小さなプライドなんてさっさと捨ててしまえばよかったと。


意地なんてみっともなく張らなければよかったと。


そうすれば優衣の痛みに誰より早く気付くことが出来たのに。




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