たべちゃいたいほど、恋してる。
知らず知らずのうちに龍之介はぐっと手のひらを握り締める。
ギリギリと音をたてる拳は白く色を変えて。
過るのはあの辛そうな笑顔。
それに気付いていたあの時、無理矢理に笑う優衣を追い掛けることが出来ていたら。
龍之介の頭を巡る"もしも"の未来。
それは絶対に手が届かないものとわかっている。
それでも求めてしまうのだ。
もしあの時あの手を掴めていたら。
今すぐに抱き締めることが出来たのに。
優衣を一人で泣かせることなんてなかったかもしれないのに…と。
「泣かせるために…悲しませるために、うーを龍に任せたわけじゃない」
ゆっくりと重く、しかしはっきりと紡がれた健の言葉が深く深く龍之介の身に染みる。