たべちゃいたいほど、恋してる。




わかっていたはずだ。初めから。


健がどれだけ優衣を大切にしていたかなんて。


そこに自分が彼女に向けるものと同じ感情があったことも。


優衣を見つめる健の眼差しはいつだって愛する人を見つめるそれだった。

彼女のことを話す健は愛しさに満ちていた。


それこそ龍之介が優衣と出会う前から変わることなくずっと。


直接言葉で聞いたことはなかったけれど、男同士だからこそ感じていた想い。


それをわかっていながら、優衣に手を伸ばしたのは龍之介だった。


知っていながらそれでも彼女が欲しくなったのだから。




「…健」


「何」




だからといって手を引く気など龍之介には更々ない。


そんなこと、出来るはずもない。




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