たべちゃいたいほど、恋してる。




健がそれを望んでいないことも十分に理解していた。

きっと龍之介が同じ立場でもそんなことは望まないだろう。


だからこそ、今言うべき言葉は決まっている。




「…もう泣かせねぇから…ちゃんと迎えに行く。俺があいつを」




決意を示すように一言一言思いを込めて言葉を紡いでいく龍之介。


力強く放たれた龍之介の言葉に電話の向こう側で健が小さく笑ったような気がした。


ふと龍之介の口元にも笑みが浮かぶ。


これでわかりあえる二人なのだ。


愛の言葉だけは紡げるくせに普段は言葉に疎い龍之介と、そんな龍之介の言いたいことを少ない言葉で理解してしまう健。


そんな二人だからこそ、その仲は続いているのだろう。


二人の間にわだかまりはもうない。




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