たべちゃいたいほど、恋してる。
「……」
「?大上くん?」
まるで品定めをするように優衣の体を見つめる龍之介の瞳。
そして
「…………………………お前、迷子なのか?」
たっぷり時間をあけた後、龍之介は眉を寄せ邪険そうに優衣を見やる。
その言葉に優衣は思い出したように体を強ばらせた。
「はっ!そ、そうだった!!って違うよ!迷子じゃないよ!ただ音楽室に辿り着けないだけで!」
「……いやお前、それを迷子って言うんだ」
自ら"迷った"発言をしたにもかかわらず、わけのわからない言い訳をする優衣に呆れたような溜息を吐く龍之介。
そんな龍之介を余所にあの先生怖いのに、と再び泣きそうになる優衣はある意味強者だろう。
龍之介は桐花国際高校の三大トップと呼ばれるうちの一人だ。
三大トップとは、何かしらの面で一際飛び抜けた実力を持つ三人に対し、生徒が勝手につけた代名詞。
だが今や"この三人に逆らうべからず"は校内生徒の暗黙ルールとなっている。
特に龍之介は悪い意味の代表として名前が上げられているだけに質が悪い。
したがって、普通の生徒なら教師に怒られるよりも、龍之介と二人きりのこの状況に泣きそうになるものなのだが。