たべちゃいたいほど、恋してる。
口を尖らせながら歩いていれば、どうやら家の近くまで来ていたらしい。
視線を少しずらしたところで目にはいったのは、家の目の前に停めてある見知らぬ赤いスポーツカー。
初めて見る車だったが、その持ち主は嫌でも想像が出来た。
「…お父さん、帰ってきてるんだ…」
(もう一週間くらい帰ってきてなかったのに)
父親の帰宅を察するや、だんだんと暗くなっていく優衣の表情。
いくら思春期の女子高生とはいえ、優衣の父親に対する反応は明らかに周りとは違う。
帰ってこなくてもよかったのに、と不安げに瞳を揺らしている優衣。
それでも中に入らないわけにもいかず、ぐっと固く目を瞑り意を決して優衣は玄関のドアを開いた。