たべちゃいたいほど、恋してる。
背景に空の青が見えることから屋上で撮影したものだろう。
普段写真を撮られることを嫌がる龍之介の珍しいそれ。
それは優衣が必死に健に頭を下げ頼み込んで撮ってもらい(盗撮ともいう)何とか手に入れた奇跡な一枚。
龍之介も誰も知らない優衣の宝物の一つである。
動くことのない画面の中の龍之介を見つめ、優衣はじわりとその瞳に涙を浮かべた。
(あいたい、よぉ…)
下唇を噛み、声を押し殺して肩を震わせる優衣。
すっと画面の龍之介を触ってみても温もり一つ感じられなくて。
余計虚しさが広がるばかり。
一体どれくらい彼の姿を見ていないのだろうか。
ほんの数日かもしれないし、もうずっと会っていないような気もする。