たべちゃいたいほど、恋してる。
「優衣、こっちに来なさい」
静かな昼下がり。
響く声に優衣の顔からは血の気を失われ青へとそな色を変えていく。
カタカタと小刻みに震える優衣の手は、その指が白くなるほど強くぎゅっと龍之介の服を握り締めて。
(怖い怖い…!)
目の前にいる父親の存在を確認すれば甦ってくる先程までの恐怖心。
体全体に広がっていく恐怖から涙さえ出てこない。
少しでも安心を求め優衣は出来るかぎり龍之介に近づきその体温に縋りつく。
そんな優衣の頭にふわりと降ってきたぬくもり。
(あ…)
よく知っている大好きなその温度に顔を上げれば、優しく目を細めた龍之介の大きな手が優衣の頭に乗せられていた。
それに安心した優衣はふわりと口元を緩める。