たべちゃいたいほど、恋してる。
その手の優しさにまた涙が溢れそうになった。
「だ、だって…だって…!」
「だって、じゃねぇの。優衣が謝ることじゃねえだろ。俺がお前の話聞かないで勝手に怒って勝手に拗ねたんだから」
だからお前は悪くねぇの、という言葉とともにその長い指で小さくぺちっと額を弾かれる。
「あぅ…いたい」
ヒリヒリとする地味な痛みに涙目になりながらも両手で額を押さえて龍之介を見上げれば、見えたのはクックッと喉の奥で面白そうに笑っている龍之介。
そのくしゃりと緩んだ顔の優しいこと。
恐らく優衣以外の誰も見たことがないであろう表情。
そんな龍之介の顔に先程までの悲しみは何処へやら。
優衣の胸がきゅんと静かに音を鳴らした。
(きゅん、ってなった)