たべちゃいたいほど、恋してる。




どれくらい時間が経ったのか。


やがて満足したらしい父親と女は、床に横たわる優衣をそのままに家を出ていったようだ。


恐らくまた一週間以上帰ってくることはないのだろう。


優衣は朦朧とする意識の中、なんとか体を起こす。



カーテンの隙間から見えた空は既に深い藍色に染まっていた。


ぼーっと暗闇に落ちていく空を見ていた優衣だが、暫らくするとふらふらしながら冷蔵庫まで足を運ぶ。




(…ご飯、食べなくちゃ…)




力の入らない腕で冷蔵庫を空ければ中に食材は殆どなくて。




「…持っていかれちゃったのかな…」




朝まではもう少し食材が入っていた。


だから買い物せずに帰ってきたのだ。


とにかく何か買いに行かなくては食事が取れない。




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