たべちゃいたいほど、恋してる。




その右手には迷うことなく優衣の鞄を持つ龍之介。




「帰るぞ」




短く紡がれた龍之介のその一言に、弾かれるように動きを取り戻すクラスメートたち。




「はーい!みんな、ばいばい!」




当たり前のように繋がれた手に優衣は嬉しそうな微笑みを浮かべながら、元気よく左手を振って教室を出ていく。


そんな二人の後ろ姿を見ながら皆が心の中で思うのだ。


二人の距離はこんなにも近いものだっただろうか、と。


しかしそれを口に出そうとするものは一人としていない。


受け入れ難い現実に立ち尽くすしか出来ないクラスメートたちだった。




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