たべちゃいたいほど、恋してる。




スーパーまでなら、と龍之介は普段綺麗にセットしている髪をそのままに、前髪だけカチューシャ型のコームでとめている。


自然と後ろに流れている髪はまるで狼の毛並みのようで。

揺れる髪の隙間から覗くシルバーのピアスは孤高の戦士を思わせた。



髪をなびかせながら歩く龍之介は、漸く家から出れたとぐっと背中を伸ばし深く息を吸う。



謹慎中、嫌というほど厳しくなった家族からの監視に一歩も家から出ることが許されなかった龍之介。


久しぶりに吸った外の空気は、ひんやりと冷たい風を肺に感じさせてくれる。




気ままに歩きながら向かうのはコンビニを数件越した先にあるスーパー。


遠すぎず近すぎないその距離は散歩するには最適だ。




< 66 / 574 >

この作品をシェア

pagetop