たべちゃいたいほど、恋してる。




「……お、がみ…くん…?」




(…やっぱ遊佐だ。って…目、真っ赤じゃねぇかよ。泣いてたのか?)




顔を上げた優衣の瞳は赤く涙で潤み、雨に濡れた柔らかな髪は白い肌に張りついていた。




「何やってんだこんな雨んなか。風邪引くだろ」




涙の理由が気になった龍之介だが、それよりも優衣の体を温めることが先だと思い、その問いを飲みこむ。


そして自分の着ていた上着を脱ぐと優衣の体にかけてやった。


春先とはいえ今年の春は夜が冷える。


そんななか雨に打たれた体は、問答無用で体温を奪っていくものだ。




(ったく、女なんだから体冷やすなよ)




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