たべちゃいたいほど、恋してる。
慌てて上着を脱いだ優衣だったが、手に持った白い大きなパーカーから何故だか視線が外せない。
しばしの間、龍之介の上着と睨めっこを続ける優衣。
そして、ふぃっと視線を逸らすと誰もいない自分の部屋をキョロキョロと見渡し、もう一度上着を着直してベッドへ横になった。
龍之介の上着で顔を隠すように蹲ると、優衣は香る匂いにその身を委ねる。
「…大上くんと同じ匂い…」
(うぅ…変態みたいだよ、私…でも…だって…安心する匂いなんだもん…)
ぎゅっと服の掴めば優衣の頭を占めるのは、泣き止むまで傍にいてくれた龍之介の姿。
あれほど渦巻いていた体の痛みや父親のことを忘れそうになっていた。