ほたる火の消えかた
水右衛門が首を傾げた。

私は複雑な思いで微笑を浮かべる。


「菊田殿は、面白い話がお好きとか」

「ん?」


水右衛門が眉を上げ、世の中全てが退屈だと常に絶望しているかのような瞳が一瞬だけ期待の色に輝いた。

「ほォ、何か変わった話でも?」

「ええ」と私は首肯して、橋の下の乾いた草むらの上に腰を下ろした。

「その死んだ者たちの、話なのですが」

聞こう、と言い、水右衛門も座る。

「一説によると、これらの火は死んだ者の魂だとか。死者の魂に囲まれて死んだ者の話を聞くのも一興、一興」

と、水右衛門は気怠そうに笑う。

ふわりと、一匹の蛍が橋の下に迷い込んできて、私の肩にとまる。

死者の魂。

ああ、ならばこれはあの人の魂か──
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