*写真屋の恋*
ニヤリと笑う猿渡に背筋が凍る。
何?
何かしたの?
昨日の今日で?
色々考えたけど、何も思い浮かばない。
……ふと、猿渡の机のダンボールが目に入った。
「?」
何故か机の上だけはいつも物一つ置かないようにしている猿渡の席。
しかもなんだか物が減っている気がする。
「柏井さん、短い間でしたがお世話になりました。」
「へ?!」
外用の笑顔でぺこりと頭を下げられる。
「では、急ぎなので。」
その後、バタバタと荷造りを終え、猿渡は呆気なく出て行った。
気合いと憂鬱をめいいっぱい背負って来た私は拍子抜けしてしばらく猿渡が消えていった扉を眺めていた。