*写真屋の恋*
エレベーターに乗り、ホテルのような廊下を緊張しながら進む。


「失礼します…」


カードキーの方を扉にかざすとピーッと扉が自動で開く。


先生の自宅…。


まさかこんな事情でお邪魔する事になろうとは。




部屋は薄暗かった。


足を踏み入れてまずびっくりしたのは大量の靴、靴、靴。


わー。


先生は靴箱の存在を知らない模様。


事務所での癖で無意識に手が動く。


靴をあらかた整頓し、先に進む。


フローリングの床も、あちこちゴミが落ちている。

本当に、あの清潔感をくるくる巻き付けたような顔であのセンセイはこんな家に住んでるんだろうか。

もーホントに。エラい先生ってもっと美意識高いもんなんじゃないの?


なんだか部屋にいつものセンセイの面影を見てしまい、クスクス笑ってしまう。どこかに緊張も飛んでいってしまった。


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