*写真屋の恋*
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18歳、仕事に苛立ち、少し自暴自棄になっていたあの時。
センセイは知り合いに誘われて、寂れたジャズバーに立ち寄った。
イライラしながら酒を煽り、友人にポツポツ愚痴をこぼし、天井を見上げていた。
すると店の隅でポロンとピアノがなり、彼女の歌声に勝手に体が反応していた。
「今思ったら、一目惚れだったのかもね。」
彼女は雪と名乗った。
「ゆきさん…。」
「そう、ゆき。薫さんの一つ上のお姉さん。僕からは4つ上。でもどう見たって僕より年下だった。」
か細い身体、ふわふわの髪、幼い顔、下手したら中学生が化粧してるようにも見える。なのに声だけは生命力に満ちていて力強い。
その日からセンセイはひたすらその店に通い詰め、気が付いたらゆきさんに馬鹿みたいに夢中になっていた。
しゃべり方もふんわりしていて、時々やけに大人っぽくって。
やっとの事でデートに誘い出した日には家に帰って飛び回ったり、
彼女にキスがしたくて仕方がなかった。