*写真屋の恋*


これがただの冗談じゃない事が、事業部長サマ直々の御電話で分かった。



「柏井さんいったい何したんだ?!」


「そんなんこっちが聞きたいですよーっ!」


「社長から直接だぞ社長!」


「なんで社長がぁ?!私ただのバイトですよ?名前すら知られてないと思いますけどっ(泣)花田事業部長、私いったいどうすればいいんですかぁ~(泣)」


「知らん!!とにかく、異例の出世だ!そしていきなり異動だ!喜べ!」


「喜べますか!私は田舎でのほほんと写真焼き増ししてるだけでいいのに~!!」


本当に、何が起こったのか分からなかった。


あの愛する職場は事実上クビ。


大学も出ていない、カメラの知識もロクにない、21歳の小娘がマネージメントスタッフ、契約社員をすっ飛ばし、いきなり社員、そして異動。



事業部長に言われた異動先があの人にもらった名刺と同じ場所で、ああ、これリアルなのね~っと乾いた笑いが出てくる。

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