*写真屋の恋*
かれこれここで働き出して
3年になる。
「いらっしゃいませ」
「おお、柏井(カシイ)さんじゃないか。」
初老の男性がフィルムを握りながら、目尻のシワを更にクシャッとさせてニッコリ笑った。
「最近顔を見なんだねぇ。」
「あは、ちょっと風邪こじらせまして」
アハハハ、と眉をへの字にして笑う。
「まだまだ寒いからねぇ」
「油断してしまいました~。」
「しかし久しぶりに会えてオジサン嬉しいよー。」
「アハハそういって貰えると私も嬉しいです。」
「あぁ、これ」
「あ、いつもの…外注出し、現のみ、スリーブでよろしいですか?」
「あぁ、よろしく頼むよ。」
「かしこまりました。」
ニッコリと微笑んで初老の男性は去っていく。
私、「柏井ゆな」も、ニッコリ微笑み返して、お客様を見送った。
パパパと作業をし、発送の用意をする。
『外注出し』っていうのは、お店で現像作業が出来ない特殊なフィルムを、大きい工場に出すコト。
『現のみ』は、単純に現像のみってコトで、スリーブっていうのは、フィルムのカットの仕方の一つ。
初めはなんのことだか分からなかったけど、3年経てば、なんてことない。
「ちわーす!」
ドンッという音と共に、聞き覚えのある声が店内に響いた。