*写真屋の恋*
ピント
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ジーンズで手汗を拭きながら、カメラを握り直した。
目の前には、ぐずっている男の子。
両目にいっぱい涙をためて、小さな手で可愛らしいヒラヒラな洋服をギュッと握っている。
そして一度もこちらを見ない。
…うわー。コレどーしよー。
とりあえず…
「な、何枚か試し撮りしま~す…」
パシャ!
ビクッ!!
…っビエ~~ン!!!
ええぇ!?
「アワワワワワワ…っっ!」
子供モデルがカメラのフラッシュにびっくりして、とうとう泣き出してしまった。
え~っ!どどどうしたらいいの~っ?!
いったんカメラから手を離し、ヒラヒラの妖精に駆け寄る。
足元のセットにしわが寄らないよう気を付け、目線が同じようになるようにしゃがみ込んだ。
「えっと、ヤマト君?大丈夫?」
「うわーん!!ママ~~っ!!」
「あれ?今日ママ一緒じゃないの?」
「…うぐっ……う…ん…っ。」
「ありゃりゃぁ~そうかぁ~。」
片隅にある資料には満面の笑顔のヤマト君が載っている。
資料には親同伴と書かれている。
…おっかしいなぁ。
「今日ママなんて言ってたかなぁ?」
「…大事な…用事があるからって…ぅぐっ…おばさんについて行きなさいって…ふぇ…」
おばさん?