*写真屋の恋*
よ、よし。
どうかこのまま泣き止んで!
近くに居た新人スタイリストの峯村君にこっそり耳打ちする。
「(コソッ)すみません、そこにあるチャックが付いたぬいぐるみに、ビニールに入れた氷を入れてきて貰えませんか?」
「え?はいっ。」
くるんくるんした茶色い髪を揺らしながら、峯村くんは走り去った。
「…でも、ママそんな小さいのに入らないよ?」
「へ?!」
ヤマト君がキラキラ輝く涙目を揺らして、不思議そうに首を傾げる。
た、確かに…!!っ
「…ヤマト君、知ってる?このカメラってゆうのはね、いつもここじゃないどこかに繋がるんだよ。ヤマト君がね、このレンズに笑いかけると、ムコウガワのママにちゃんと届くようになってるの。」
「えー!!スゴーイ!(キラキラ)」
「ちゃんとママみててくれてるからね、今日、ママに格好いいとこ、見せちゃおう!!」
「うん!!」
と、後ろからすっと峯村くんがアレを用意してきてくれた。
ありがとうと小声で伝えて、そのもふもふした可愛らしい物体を掴む。
「はい!じゃあ目擦らないでね、このうさちゃんを目に当てて30数えてね!出来る?」
「うん!!いーち、にーぃ、さーん……」
ほっと、胸を撫で下ろしていると、肩にポンッと手が乗った。
「初仕事お疲れ様。」
「あ、先生」
「では、ここから僕が引き受けるから。ありがとうね。」
「はい。」
「…にじゅきゅー、さんじゅ!!」
パッとぬいぐるみから顔を上げたヤマト君の目の前には、ニッコリ先生の顔。
「ヤッホー。ヤマト君♪」