*写真屋の恋*
キョトンとしたのは一瞬で。
「あ~っ!ワタルのおじちゃん!」
ヤマト君の顔がパァッと満面の笑みに変わる。
ブッ!
お…おじちゃんだって…ブブッ!
ヤマト君はキャッキャッ言いながらセンセイの周りを跳ね回る。
さっきの涙はどこえやらだ。
……………。
…あれ?
もしかしてもしかしなくても、
初めからセンセイが撮ってたら、こんなにぎゃぁぎゃぁわぁわぁになってなかったんじゃない?
ぐ、ぐはぁ~
「無駄な努力」という文字を背負いながら、とぼとぼスタッフ達が控えてる場所まで下がる。
そこに先ほどの峯村くんがちょこんとやってきた。
「あ、峯村くん、さっきはありがとう。」
「いえいえー、あのうさちゃん、柏井さんの私物ですか?」
「あ、え、そうなの…///良い年こいてうさちゃんとか、なんか…ゴメンナサイ。」
アレは、パソコンで疲れた時とかに使ってるやつで、実はかなり重宝してる。しかしデザインがファンシーかつヒランっヒランなので、誰にも見られないように注意してたのだ。なんだか恥ずかしくて…。そう、センセイにも内緒。
「ふっ、柏井さんって可愛いっすね(笑)」
「ギャー可愛いの使っててゴメンナサイ。ヒランヒラン好きでゴメンナサイ。生きててゴメンナサイ。」
「え、そういう意味じゃなく。」
「ゆな君!アレ取ってきて!!」
センセイの声がいつも以上に荒くスタジオに響く。
「あ、はい!!」
峯村くんの笑顔を後に、猛ダッシュでスタジオから飛び出し、仕事部屋に戻る。