*写真屋の恋*
「ネエチャン!ネエチャン!これどないすんのや!」
「はい、いまいきます。」
「ちょっと、デジタルカメラのフィルムって売ってる?」
「デジタルカメラに入れるのはフィルムではなく、その変わりにデータを保存する、こういうチップみたいなのを入れるんですよー。」
「ネエチャン!証明写真とってくれや!男前にな!ガハハハ」
「アハハハかしこまりました。」
おじいちゃんとおばあちゃん率が圧倒的に多いこの街は、若いというだけで「べっぴんさん」になってしまうような、そんなのんびりした場所だ。
たいがいは気の良い、イイ人たちだけど、中にはダメな方に元気な人たちもいる。
スッとお尻に手が延びて来て、それをパッとかわし、ニヤニヤ顔のおじさんにニッコリ微笑む。
「よぉネエチャン!この注文する機械教えてくれ!」
「はい。山本さん、いつもありがとうございます。」
「そうやぞ!こんだけ注文してやってんだから、もっとサービスしろよ!いろーんなサービスをなぁ…」
ニヤニヤと常連客の「山本さん」は笑う。
私もニコニコ笑顔で返す。
「そうですよね~。山本さんの奥様にもよくお写真のプリントしていただいてますもんね~。本当にいつもありがとうございます~。」
「…え、」
「奥様、今日もお越しになるようですよ。(ニッコリ)」
「そ、そうか。」
「いつも仲良くさせていただいて。(ニッコリ)」
みるみるうちに「山本」さんは血の気が引いてきている。
まあこのぐらいにしとくかぁ。
…別にチクった事ないけどね。笑
これでこのオジサマもしばらくは大人しくしてくれるはず。
さ、ネット注文確認して、ちゃっちゃと終わらそう。
私の仕事生活は充実している。
小さなときめきだってあるし。