*写真屋の恋*
「この方が奥様だったんですね。なんとなくそう思ってました。」
「うん。」
でも、おかしい。
今30代のあのオネエサンが「妹」ということは、これは相当古い写真だ。
そんなことを考えてるのが分かったのか、センセイはうなずいて、天井を見上げた。
「…遠ーいとこにね、行っちゃったんだよ。」
まるで遠い空の上を眺めるように。
バンッ!!
「ちょっとWATARUさん!打ち合わせの時間過ぎてるんだけど~っ!」
「あ、タケチャン。」
「あ、じゃないわよ!」
空気を断ち切るように、鬼の形相でオネェ系編集者が入って来た。
「ゆなちゃ~ん、この子借りていくわねぇ~」
「あ、はい」
「さぁ行くわよ!」
「え~」
「え~じゃない!」
「だって今日あの人も来てるだろう?」
「だから逃げないように直接迎えに来たんじゃない!」
問答無用!と武芳(たけよし)さんはセンセイの首根っこを掴み、ズルズルと引きずる音と共にあっという間に扉の向こうに消えていった。