*写真屋の恋*
「センセイ、そこにも書いてますけど、明日朝一で「ミケナーニ」さんとの打ち合わせなんで、遅刻しないで下さいね。」
「ぇ~、」
「センセイ。」
「ぇ~~」
「ぇ~じゃないです。また携帯で起こすんで、それでいいですか?」
「うん、よろしく。助かるよ。」
「…本当、打ち合わせ嫌いですよね。」
「ハハ。」
カタン、と椅子から立ち上がり、ポンと私の頭を触る。
ふわりと微笑み、慈しむように撫でられるから、…時々、勘違いしそうになる…。
「いつも悪いね。ゆな君」
「…っ///セ、センセイのわがままには慣れてますから…っ。」
ほのかにセンセイから大人の良い香りがして、クラクラする。
「…センセイ、前から思ってたんですけど、何か香水?みたいなもの、付けてます?」
「ん?あぁ、ボディーソープがちょっと変わってるらしくてね。」
「らしい?」
「なんやら海外にいったおみやげだとかいって薫さんが大量にくれたんだよ。」
ドキリ、とした。
痛いぐらいだった。
まだ山のように残ってるんだよねーというセンセイの声が遠くにあるみたい。
仕事を中途半端にセンセイと向き合いたくない。センセイと少しでも並べるようになって初めて、正面からぶつかって行こうって、…決めたのはずいぶん前。
それまではこの気持ちは封印しようと決めたのに、ふいをつかれると、ぐらりとしてしまう。
薫さんとは、あの奥様の妹さんだ。